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オニヒトデのコントロールは可能か?
八重山海域で進行中のオニヒトデ対策活動と経 緯 2007.05.24 更新

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現在の石垣島では昼間はサン ゴの下に隠れている。
25cm約満3才で繁殖能力あり(撮影05/12/29)
複数の食痕(食べられた白い サンゴ)近くを探す。
竹富島南海域(撮影05/12/29)

1、「大発生オニヒトデは駆除するな!」の意味
 石西礁湖のような閉鎖海域内でのオ ニヒトデ産卵は、大きな台風など気象撹乱が少ないと生存率を高める。3年後の異常に高い生存率のサンゴ食になったオニヒトデは、 通常ではありえない昼間からサンゴを食する状態となり、1981年、竹富島北東礁嶺で1平方メートル133匹を記録し、30cm以上の オニヒトデが重なり合う状態となった。この状態での駆除は間引きにしかならない、オニヒトデ生存期間を伸ばしてしまい、サンゴ の自然再生と回復期間を遅らせる、それが「大発生オニヒトデは駆除するなの!」意味です。
 人手による駆除が追いつかない昼間からサンゴを食する高密度異常発生状況では、サンゴを食べ尽くさせてオニヒトデが消滅する のを待つのがサンゴ再生を早めてくれます。大発生状況に至った時オニヒトデは積み重なるように昼間からサンゴを食し、広い海域 の人手による駆除は所詮オニヒトデの集中する海域の一部でしか出来ず、結果的にオニヒトデの存命期間を伸ばしてしまいサンゴの 自然再生が始まるのを遅らせるからです。
 壊滅から新たなサンゴ種苗は供給されるかと心配されるでしょうが、100%のサンゴ死滅はあり得ずどこかに生サンゴが残り種苗 供給してくれます。これらの事例が八重山ですでに証明されてます。1991〜1995年アムウェイ助成によるサンゴ移植・復元事業は 成果を示すデータが無く、移植サンゴの周りから自然再生したサンゴに覆われていった。

2、過去のオニヒトデ異常大発生と現在のオニヒトデ駆除対策活動
 この大発生ともいえる状況が2001年から沖縄本島〜ケラマ諸島で、2004年には宮古島八重干瀬多良間島に も起きてしまった。1970〜1980年代の琉球列島沿いに発生したオニヒトデ大発生& 駆除は、国からの駆除予算が各島々の漁協丸投げだった事もあり、駆除数実績だけが目標となって、浅い(取りやすい)大量にオニ ヒトデが生息する海域に集中し、国の予算の都合でオニヒトデ産卵後に開始する等、なんら対策となる作戦などを伴わないもの だった。
 過去の駆除は浅海域でのスノーケリング、スキンダイビングによるものが、スクーバの普及で現在はより深い海域からの駆除に変 化し、産卵前の駆除配慮は常識となった。参照サイトとして元琉球大学 理学部 海洋自然科学科 山口正士教授(2006年3月末退職)「サンゴの敵 オニヒトデの正体を知ろう」がある。このオニヒトデ問題に重要で価値あるサイトが流大サーバーか ら一度削除された経緯があり、作 者の了解を得て2007年5月23日移転・公開させて頂きました。
 ・沖縄の海とダ イビング 2005年01月09日 何故するのか?

3、2002年からの石垣島での取り組み
 2002年沖縄本島〜ケラマ諸島で大発生に対応して、環境省サンゴ礁研究モニタリングセンター(以後サンゴセンター)と八重山 ダイビング協会は、オニヒトデ情報を集めた。サンゴセンターは漁師への聞き取り&アンケート配布&回収で、八重山ダイビング協会は同胞メールで。 結果報告
 オニヒトデ大発生危機の共有が、2003 年1月 17日の最初のオニヒトデ調査駆除活動となって以後の活動へと展開していく。

4、関係機関によるオニヒトデ対策会議
 石垣島が他地域より恵まれたのは、行政を含む関係機関を集め意見交換を呼びかける環境省サンゴセンターの存在がある。 行政と民間組織が集まり「オニヒトデ大発生危機」で会議を開催出来る。もうひとつの恵まれた事として人材がある。10年以上に渡っ てオニヒトデ研究するオニヒトデ専門官とも言える上野光弘氏が環境省外郭団体「自然環境研究センター」嘱託でサンゴセンターに勤務していたからだ。
 上記、漁師への聞き取り&アンケート配布&回収も上野光弘氏による。

5、対策会議のゴタゴタ
 何度かの対策会議を経ての結論は最初にモニタリングありきで、八重山全域のスノーケリングによるモニタリングを ベースに駆除海域等を選定していく、これらから重点保護海域の選定というオニヒトデ大発生を前提とした守るべき海域の選択も同 時平行するが、進行役の環境省に大発生前提があり(責任逃れ?)、03/6/13プレスリリースでは環境省より勝手な事をやっては困ると、当時の環境省沖縄事務所所長からの指 示をサンゴセンター岡野隆宏さんより伝えられ、だめ押しの一言「今後このよ うな事をされては予算を降ろせない」にプチ切れて「2度と環 境省予算は受けない」 と切り返した。 以後環境省予算は「上野光弘氏と漁協オニヒトデチーム」で進行する。当時の沖縄事務所所長は誰だったのか?
 ・八重山毎日 2003年6月13日 ダイビング協駆除まとめ/オニヒトデ1227匹を駆除
 ・横浜国 大 松田裕之 公開書簡 2005-05-16 石西礁湖オニヒトデ問題 見事に外れた大発生予測

6、沖縄県自然保護課・サンゴ礁保全対策支援事業
 2004/11/26 沖縄県特別振興対策費 「サンゴ礁保全対策支援事業」に係わる委託説明会がサンゴセンターで開かれ、八重山漁協と八重山ダイビング協会に(財)沖縄県環境科学センターをとう しての委託業務が説明された。私は上記 「2度と環境省予 算は受けない」 なので、八重山漁協委託を提案したがどうしても両者に委託したいという沖縄県自然保護課担当者の言葉で 説明会参加を受け入れた。オニヒトデでは何時も上記自然保護官・岡野さんと意見が食い違いぶつかるので、岡野さんの進言を受けて 八重山ダイビング協会総会で環境対策委員を募った。正直今回の予算は環境省がオニヒトデ対策予算で苦労しているのを聞き知って いたので、駆除作業実務大半を受け持つ「上野光宏氏と漁協オニヒトデチーム」を支える予算が拡充されて喜んだ。 八重山ダイビング協会の駆除数は割合でも少ないが八重山ダイビング協会員のオニヒトデ意識向上と駆除訓練にはプラスになる。
 ・沖 縄本島周辺におけるサンゴ礁現状調査およびオニヒトデ大量発生予知への試みpdf(約22MB)
  (財)沖縄県環境科学センター
                 
7、国内最強のオニヒトデ駆除チーム
 何度も出てくる「上野光弘氏と漁協オニヒトデチーム」は、30年前の駆除予算丸投げの漁協とは比較にならないスペシャリスト・ オニヒトデ駆除チームに発展した。オニヒトデの食痕を探してその食痕からオニヒトデを見つけ出すは、発生初期の頃と比較 してなぜか困難になってきている。笑い話でオニヒトデに駆除が知れ渡り警戒されてると。八重山の広い海域のモニタリング調査も「 上野光弘氏と漁協オニヒトデチーム」で行ってるが、それもこれも上野光弘氏の存在を抜きにして考えられない。
 岡野さんや沖縄県環境科学センターの長田君が上野さんと駆除で潜ると、オニヒトデ駆除数で上野さんにとてもかなわない、 上野さんはオニヒトデの匂いがわかるのではと真面目な顔して話していた(笑)「漁協オニヒトデチーム」にも上野さんに応える有能 なリーダーが存在する。
 上野光弘氏は学生時代に黒島の海中公園センターにオニヒトデ研究 で長期間滞在していた経歴をもち、現在の海中公園センターに研究員で勤務していたが、オニヒトデの動きが出る2002年より環境省の 外郭団体「自然環境研究センター」職員と してサンゴセンターに勤務すること になった。2004年漁民からの疑問に応えて行われたオニヒトデ2分割、4分割、中心部すり潰し生息テストでは、カニカゴに入れた分割 オニヒトデをサンゴセンター前の海に設置毎日写真撮影して立証した。結果は中心部すり潰し:2日、4分割:5日、2分割:2週間で分解。 しかし2006年「自然環境研究センター」も辞めて現在はフリーの立場でオニヒトデに係わっている。もちろん環境省のオニヒトデ業務 を委託業務として受け持つが、専門官として環境省は採用してくれない。八重山のオニヒトデ大発生抑止が明らかになった暁に、環境省 は恥をかくだろう。
 ・琉球新報2007年5月22日 オニヒトデ増加傾向に歯止め/定点駆除が効果/石垣、西表島海域
 ・非大発生時のオニヒトデの生態 上野光弘 1995年3月

8、インターネット上のオニヒトデ駆除への様々な意見
 オニヒトデ大発生が各地区で再発し駆除活動が活発化したが、反面駆除への疑問意見も発生した。この駆除疑問視は、 発生原因が解明されない現状がもたらしたと言えるかもしれない。インターネット時代のオニヒトデ駆除活動は、説明責任も必要に なってくる。疑問意見は、オニヒトデもサンゴ礁生態系に含まれる必然性を伴うや、大発生は人間活動影響の可能性があるので原因を 究明する事が優先する等。「駆除自体が大発生原因につながる」もあって、いずれも背景にはサンゴ礁保護に関る地域行政の認識不足に 対する批評が込められている。
 そして、駆除する立場の人の意見 も駆除に反対の人もサンゴ礁を心配している事では一致しているのだ。
 大発生原因が、サンゴ礁研究大国オーストラリアでの海水分析で陸域よりの人間活動影響が解明されつつあるのだが、それを示すリンク先 は言語の壁に阻まれて見つける事が出来なかった(泣)  
 ・JANJAN>検索>オニヒトデ
 ・和剛丸で海と遊ぶぷろぐ オニヒトデ研究会
 ・イルカ&クジラ 救援プロジェクト>サンゴ礁の環境(オニヒトデとサンゴ)

 現在の八重山で行われているオニヒトデ駆除は、サンゴ礁保護政策に含まれる「オニヒトデ大発生抑止・オニヒトデコントロールの試み」 という位置付けで駆除否定論の方には理解を求めたい。
 ここでも文頭に異常大発生時での駆除反対という、状況による駆除否定論を提示した。
 ・オニヒトデの話pdf/33p
  2004年3月第2版 発行:沖縄県環境文化部自然保護課 編集:(財)沖縄県環境科学センター
 ・利用者負担のあり方に関する調査pdf (財)沖縄県環境科学センター 長田智史
※沖縄県内ダイビング業者アンケートからのダイバーにサンゴ礁 保全基金(オニヒトデ駆除費用含む)の可能性を提案。私は利用者負担を上げるなら、膨大な利益を上げる航空会社に提案すべきと反論&拒否。

9、石垣島で現在進行中のオニヒトデ・コントロールの試み

 実は今、世界のあちこちでオニヒトデ問題が再発している。5年目を迎える八重山でのオニヒトデ・コントロールの試みは成果を 上げつつあり、世界的にも稀な事例となるかもしれない。
 1997年国際サンゴ礁年にインターネットから発信された「リーフチェック」は、 世界のサンゴ礁危機と対処するネットワーク・調査方法の統一が提示され、サンゴ礁保護の大きな前進となった。そして2008年の来年は 2度目の国際サンゴ礁年を迎え、サンゴ礁保全を目的とした国際的な協力の枠組 「国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)」は議長国が日本とパラオで、今年より様々な活動が計画されている。

10、サンゴ礁の生命力
 1970〜1985年大発生後のサンゴ礁回復を目の当たりにして、八重山のサンゴ礁回復力・生命力の素晴らしさを実感。サンゴ移植が 間違いと言えるのもこの回復・再力生があるからです。大発生後のサンゴ礁荒廃からでも、サンゴ移植理由に挙げるサンゴ種苗元となる 食べ残しはどこかに残されており、また石垣島など山のある島の河口域におけるダイナミックなサンゴ再生力も重なり、1998年の世界的 サンゴ白化も乗り越えて人間の力など借りずによみがえる現在があります。環境省・石西礁湖自然再生計画は、なぜか人間の力(サンゴ移植)で回復させたいよ うだ。真意は予算確保に サンゴ移植が解りやすく適しただけらしい。
 現在、八重山海域のオニヒトデ駆除は深場からの侵入地点を同定し定期的に駆除する事で、駆除数の減少を示し始めており、3年前の「オニヒトデと八重山のサンゴ礁」講演会(04/7/30) で提示されたオニヒトデ大発生の予測を打ち砕いた。しかし、侵入地点以外の海域から大発生オニヒトデの遡上が起きないとは言えない のも事実。
 
11、オニヒトデ異常大発生を解き明かす
 引用が長くなりますが、元沖縄大学教授・宇井純氏の「日本の水はよみがえるか」(第11章沖縄ー日本列島の縮図)からです。 宇井純氏は、グァム大学パークランド博士の太平洋各地での調査とその推論が、オニヒトデ異常発生原因が陸上からの栄養塩類流出に あるとの立証を紹介しています。
・パークランド博士は太平洋各地約100カ所のオニヒトデ異常発生事例を調査。
・共通事例として、オニヒトデが多数見つかる3年前に日照り後の大雨があった事を突き止めた。
・雨台風での後はオニヒトデ発生が多く、風台風で雨の少ない時は発生しなかった。
・高い山を持つ島ではオニヒトデをさす土地の言葉があって刺された時の治療法の言い伝えがある。
・山の無い低い環礁などの島では、それらが無かった。
これらの調査から、日照りが続いて土が焼けた時に雨が降ると、土に含れていた肥料分が洗い流され植物性プランクトンの大発生が起きる。 これがオニヒトデの産卵期と一致するとふ化したばかりのオニヒトデ幼生の餌が豊富にあるので、その生存率が爆発的に増大してしまう。 成熟オニヒトデは数百万から一千万個の卵を産むが、正常時に成熟オニヒトデになるのは1、2個で、後は食べられたり餓死する。皮肉な 事にオニヒトデの卵はサンゴ虫に食べられる事が多い。こうして生き延びたオニヒトデは、幼生時は深場に潜り海藻(石灰藻)などを食べて 大きくなり、3年後に成体(約20cm)になって浅場に上がりサンゴを食べ始める。
 ・オニヒトデ幼生広域輸送過程 東京工業大学灘岡研究室
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最大クラス 40cmにせまる大型個体。
下の水中スレート幅は21cm(撮影05/12/29)
岩陰で見つけた ホラ貝には、消化されず吐き出された
オニヒトデのトゲが見える。(撮影05/12/20)

12、あとがき
 宇井純氏の「日本の水はよみがえるか」は1996年(平成8)出版で10年前にこの知見が公開されながら誰も評価しな かったのだろうか?  今、沖縄からよみがえ れと叫ばずにはいられない。しかし、此処に日本の縮図・沖縄の宿命がある。復帰後の公共事業による本土並み経済発展は、サンゴ礁の 海を荒廃させる赤土流出をもたらし、その経済発展を受け入れた沖縄県は自らの方針を否定しかねないオニヒトデ大発生の原因を 受け入れる訳にはいかないのである。
 そして今、1970年代の悪夢が沖縄本島から繰り返された。恩納村の大発生がケラマ諸島・奄美群島まで広がり、2004年には山の無い 宮古島にも到達して(沖縄本島からオニヒトデ卵が黒潮反流にのって流れ着いたとの推論があるが不明。)12月には石垣島の北隣り多良間島に大発生した。 そして石垣島はどうなるのか?それは誰にも解らない、だが森とサンゴ礁が繋がる石垣島に残るサンゴ礁の未来を示す 聖地を破壊する計画だけは 許せない。

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