沖 縄と奄美群島では1970年代にオニヒトデの大発生が広がりながら続いていたが、、その黒潮の下流域にあった各地のサンゴ群集にオニヒトデ集団が次々に出 現し、それぞれ駆除された記録が残っている。その当時の駆除データを元に、オニヒトデの時空間的な変動を見ると、上流海域からの浮遊幼生の供給経路である 黒潮の流軸変化(直進と大蛇行の交代現象)とそれに伴った沿岸水温、特に冬の最低水温の変動、すなわち大きく成長するまでの数年間にわたって越冬できたか どうか、を示しているようである。

串 本のサンゴ群集では黒潮が接岸していた1970年代の前半に、それ以前は見られなかったオニヒトデの集団が現れ、1972年から1979年まで駆除が続け られた。1974年度が駆除個体数のピークで、その間に合計約1400個体が駆除された。1981年以降は(ごく最近に再び出現するまで)全く見つかって いない。

1975 年から始まり5年間続いた大蛇行の間に黒潮が沖合いに離れて沿岸水温が低下し、同時に幼生供給が途絶えてからオニヒトデの一時的な集団は1980年までに 消滅した。その間、1973年から1978年までに捕獲されて測定されたオニヒトデの直径の頻度分布(左の図)を見ると、はじめ直径10cm以下の稚ヒト デから30cmの成体まで見られていたのが、消える前の1977-1978年には大きい個体だけとなって、1975年の後には幼生の供給が止まっていたこ とが考えられる。また、毎年の駆除で見つかった個体は、より大型のものは駆除で減少し、小さかったための取りこぼされたものが翌年までに育ってから駆除さ れていたらしいことがこのグラフから読み取れる。

串本の冬の沿 岸水温はオニヒトデの成体が越冬することが出来るかどうかのぎりぎりの15度まで低下した。1980年代前半の冬の水温はかなり低い水準であったので、こ の間は黒潮が幼生を運んで来ても越冬できなかったものと考えられる。 (2004.05.16)

Yamaguchi, M. (1987) Occurrences and persistency of Acanthaster planci pseudo-populations in relation to oceanographic conditions along the Pacific coast of Japan. Galaxea No. 6 pp. 277-288

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