このサイトには「観光客の皆さんへ」というガイダンスのページがある。(ただし、
「夏の海にご用心:多い有害な生物」という記事の中にハブクラゲのハの字もないのは何故であろうか。一方、ハブクラゲについてのコメントが
書いてある「海の有害物質、知らないものには手を出さない」という記事ではそのタイトルが何故「有害生物」でなく「有害物質」なのだろうか)。
オニヒトデにつ
いて、これまで書いてきた論文や報告のタイトルと要旨を以下に示します。
山口正士
(1989).
オニヒトデ問題 (3) 漂流カプセル実験による、オニヒトデ浮遊幼生の琉球列島群島間の分散・伝播現象の検証 海洋と生物 No. 60 pp.
8-14
オ
ニヒトデの産卵期に合わせて、その卵と幼生の流動と拡散を知る目的で漂流ハガキとカプセルを沖縄島の北部から流して調べた。一週間の間をおいて実施した二
回の実験の回収結果は大きく異なり、夏場の表層海流による幼生運搬が低気圧の接近などで大きく変化することが示唆された。
山口正士
(1988) ニライ・カナイの島じま(沖縄の自然は今) 第3章、サンゴ礁を考える. 築地書館 全245頁 分担26-41頁
池原貞雄、加藤祐三編著、
琉球列島に
おけるサンゴ礁の環境破壊について自然的および人為的な要因を解説し、主としてオニヒトデの食害問題を論じ、サンゴ礁における環境保全と資源管
理の関係の重要性を指摘した。すなわち、資源の持続的な利用を実現するために環境保全は前提条件であり、漁民の生活基盤を守ることが自然保護の基礎とな
る。
Yamaguchi, M. (1987) Occurrences and persistency of Acanthaster
planci pseudo-populations in relation to oceanographic conditions
along the Pacific coast of Japan. Galaxea No. 6 pp. 277-288
本
州から九州までの黒潮流域のサンゴ群集に一時的に出現したオニヒトデの集団は、上流域の琉球列島での大発生集団から生まれて黒潮によって運搬されてきた幼
生に由来したものが、黒潮の持続的な接岸状態によって冬の水温が致死温度以下に低下しなかった場合に生長して出現したものと推定された。
山口正士 (1987) オニヒトデ問題 (2) オーストラリアのオニヒトデ問題 海洋と生物 No. 49 pp.
91-96
オー
ストラリアのグレート・バリア・リーフでは、1960年代と1980年代の二度にわたるオニヒトデの大発生を経験した。ここでは琉球列島やミクロネシアの
場合と異なり、駆除はせずにサンゴ礁の受ける影響を広くモニタリングすると共に、多くの基礎研究プロジェクトを推進させた。
Yamaguchi, M. (1986) Acanthaster planci infestations
of reefs and coral assemblages in Japan: a retrospective analysis of
control efforts. Coral Reefs Vol. 5 pp. 23-30
琉
球列島から本州の黒潮流域にかけて発生したオニヒトデの集団について、各地での駆除データを取りまとめた。沖縄本島と周辺離島でオニヒトデが大発生したの
と同時に足摺宇和海や潮の岬でも一時的な集団が出現した。また、先島諸島と奄美群島はそれから約10年遅く発生した。黒潮とその反流を介した幼生の運搬と
伝播が示唆された。
山口正士 (1986) 日本の亜熱帯海域における熱帯性底生無脊椎動物の個体群変動 海洋と生物 No. 42 pp. 2-7
九州以北の
黒潮流域沿岸にはサンゴ群集が分布しており、その他の熱帯性の海洋生物で一時的に出現する種類もある。オニヒトデは、それが琉球列島で大発生していた時
に、この亜熱帯海域に「偽集団」を形成したが、黒潮の流軸の変動に平行して場所による消長が見られた。
山口正士(1986) オニヒトデ問題 (1) オニヒトデとの付き合い方 海洋と生物 No. 47 pp. 408-412
オ
ニヒトデの大発生海域は年を追って広がってゆく傾向が強く、サンゴ類を食べ尽くしてから消滅する。これまでの大規模な、しかし場当たり的な駆除活動はほと
んどがその目的を達成していない。海中公園海域などでは、サンゴ群集の食害後の回復に重点をおいて、繁殖個体群を集中的に守るような駆除方法を実施するの
が効果的である。
山口正士(1981) サンゴ礁とオニヒトデ 動物と自然 Vol. 11 pp. 28-35
オニヒトデ
は時に大発生して造礁サンゴを食べつくし、サンゴ群集の組成と景観を大きく変える。その大発生の原因については諸説があるがこの現象を説明できる決定的な
仮説は存在しない。また、その生態的な意義についても学者の間で根本的な解釈の違いがある。
Yamaguchi, M. (1974) Growth of juvenile Acanthaster planci
(L.) in the laboratory. Pacific Science Vol. 28 pp. 123-138
オ
ニヒトデを受精卵から成体まで実験室で約2年間、飼育観察した結果を報告した。成長曲線はS字型で、初期の稚ヒトデは石灰藻類を食べてゆっくりと、サンゴ
食になってから早く成長した。餌として与えたサンゴ、ミドリイシ類とハナヤサイサンゴ、によって成長率が顕著に変化した。
Yamaguchi, M. (1974) Effect of elevated temperature on the
metabolic activity of the coral reef asteroid Acanthaster planci
(L.). Pacific Science Vol. 28 pp. 139-146
異なる水温
に置かれた、静止状態でのオニヒトデの呼吸率を測定し、基礎代謝が温度によって支配されて変化する率を観察した。水温が摂氏31度以上でオニヒトデは代謝
障害を起こして、起き上がり行動などが異常になり、33度では摂餌をやめてから後に死亡した。
Yamaguchi, M. (1973) Recruitment of coral reef asteroids,
with emphasis on Acanthaster planci. Micronesica Vol. 9 pp.
207-212
グ
アム島沿岸のサンゴ礁に生息するヒトデ類の個体群構造には、成体ばかりで若い個体がほとんど含まれない、という傾向が顕著であった。オニヒトデの個体群も
同様であって、これらの加入水準は通常は低く、まれにまとまった数の稚ヒトデが加入して維持されているものと推察された。
初期生活史と生長、交雑についての論文
Lucas, j. S. (1984) Growth, maturation and effects of diet in
Acanthaster planci (L.) (Asteroidea) and hybrids
reared in the laboratory. J. Exp. Mar. Biol. Ecol., 79, 129 - 147.
Lucas, J. and M. M. Jones (1976) Hybrid crown-of-thorns
starfish (Acanthaster planci x A. brevispius)
reared in the laboratory. Nature, 263, 409 - 412.
Yamaguchi, M. (1973) Early life histories of coral reef
asteroids, with special reference to Acanthaster planci (L.).
in Jones, O. A. and R. Endean (eds.): Biology and Geology of Coral
Reefs. Vol. 2, 369 - 387
Yamaguchi, M. (1974) Growth of juvenile Acanthaster planci
(L.) in the laboratory. Pacific Science, 28, 123 - 138