八重山毎日新聞 新年号
2003年 1月 1日(水) 

押し寄せる外国製漂着ごみ

大半はペットボトル

ハングル文字に漢字… 国別では近い台湾が最多


 八重山各島の海岸線はいま、漂着ごみの山と化している。その大半は外国製のペットボトルで、島によっては白い砂浜がおびただしい量の漂着ごみに埋め尽く されている。四面を海に囲まれた八重山は、急増する外国からの漂着ごみにさらされやすく、近年、大きな海洋環境汚染問題としてクローズアップされている。 このままだと、シマの美しい自然景観である海岸線は近い将来、失われることになりそうだ。

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台湾からの 漂着ごみが大量に打ち寄せられた与那国島のウブドゥマイ浜 ペットボト ルや発砲スチロールなどの漁具が流れ着いた黒島の保里海岸

 漂着ごみについては、全国の海岸を歩き、調査をしている防衛大学校の山口晴幸教授(自然環境・環境地盤工学)が1998年に「南西諸島は全国でも外国か らのごみの漂着度合いが高く、海岸汚染が深刻」とする調査結果をまとめ、関係機関に警鐘を鳴らした。
 同教授が97年に日本最南端の竹富町波照間島から奄美諸島にかけて計97カ所の海岸で実施した前調査では、漂着ごみの主流は近隣諸国からの外国製ごみ で、しかも台湾に近い西方にある島ほど漂着が激しいことが分かった。
 さらに、98年からは毎年春と夏の2回にわたって6島、42カ所の海岸で延べ166回にわたって本調査を行った。
 その結果、与那国島では漂着ごみが1キロ当たり1万個を超える海岸が11海岸中4カ所あり、中でも同島東部のウブドゥマイ浜では1キロ当たり3万個のご みが確認された。
 また、西表島では15海岸中5カ所で1キロ当たり1万個を超え、特に北東側海岸に大量の漂着ごみがみられた。石垣島では、東部の星野や北部の海岸域で1 キロ当たり1万個以上のごみが打ち上げられているのが確認されたという。
 漂着ごみは数量的にも、台湾や中国、韓国など外国からのごみが日本製ごみに比べて圧倒的に多いのが特徴だ。
 山口教授によると、八重山諸島のほとんどの海岸では日本製ごみの占める割合が10%以下であるのに対し、外国製ごみが40%を占める海岸もあるという。
 外国製ごみの特定は、ごみに付着しているラベルや直接表記の文字、バーコードで判別できる。
 国籍別にみると、中国系ごみが30−50%、台湾系ごみは20−30%、中国と台湾の両タイプの中国系ごみは60−70%、韓国系とその他(英語系)は 10%以下だった。
 このほか、ラベルがなかったり、表記が消えているため判別できない不明ごみもあるが、「容器の形からして多くが外国製。八重山諸島の漂着ごみの半数以上 が外国製ごみと考えられる」(山口教授)と推察している。
 種類別では、ペットボトルなどプラスチック類が全体の7割を占め、次いで、ドリンク剤のビンや缶、発泡スチロール製のブイなど漁具が目立つ。最近では、 注射器や医薬品の入ったガラス容器など医療廃棄物も見つかり、有害物質による海岸汚染が懸念されている。
 一方、急増する漂着ごみに地元の行政機関や民間団体も動き始めた。昨年3月には、海洋環境保全を目的に石垣海上保安部と石垣航空基地、環境省沖縄地区自 然保護事務所など国の機関の呼びかけで、県や3市町、環境団体、民間業者などを網羅した「八重山環境ネットワーク」が結成された。
 同ネットワークでは、これまでに郡内各地の海岸で啓発活動の一環として、ビーチクリーンアップ作戦を展開、漂着ごみなど回収した。
 昨年10月に西表島鹿川湾で実施した海岸清掃で漂着ごみの分析調査をしたところ、ペットボトルなどプラスチック類が87%を占め、国籍が判明したごみの 94%が外国からの漂着ごみであることが分かった。
 また、国別では台湾が161個と最も多く、フランス、イタリア、南アフリカ、タイ、オーストラリア、中国など15カ国のごみが確認された。
 漂着ごみは元をただせば、われわれの生活から排出されるプラスチック製品がその大半を占めている。とくに清涼飲料水の容器としてヒットし、世界各国で大 量生産されているペットボトル類は1度海に投棄すると、回収しない限り、海上を漂流し続ける。結果的にはそれが海岸汚染を招く、大きな元凶となっている。
 八重山各島の漂着ごみは、黒潮など海流によって運ばれる外国製のごみだけではない。海岸への不法投棄や船上からのポイ捨てなどによる国内ごみもある。い わば、これらの漂着ごみは大量生産・大量消費という経済優先社会のツケといえよう。
 漂着ごみが地球規模で広がる中、海岸線の汚染状況の調査活動を続けている防衛大の山口教授は「まず全国で公的機関による実態調査を行い、国際的な協定に 基づき、近隣諸国との話し合いが必要」と話している。

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