八重山毎日新聞
1999年 1月30日(土)

 
御嶽の市有地を身売り?

野 底 地 区

市が八重山リゾートに計画

開発推進と歳入増を狙う


 御嶽の敷地となっている市有地を、リゾート開発会社に売却する計画が検討されている。オリックスグループが石垣市野底地区の約100 ヘクタールで計画している「八重山リゾート」に関連して、計画地内にある野底御嶽の敷地(市有地)1250平方メートルを市が開発会社の八重山リゾート開 発株式会社に売却しようとしているもの。同御嶽は文化財ではないが、石垣市文化財審議会(崎山直委員長)は事態を重くみて、28日の委員会でこの問題を取 り上げ、現地視察を行った。委員からは「御嶽の土地を売るというのは前代未聞。こんなことをやってはいけない」など、否定的な意見が相次いだ。同審議会は 来月中旬に改めて会合を開き、委員の意見を取りまとめることになっている。市役所内部からも「売却ではなくて、たとえば、土地の使用権の設定にとどめるな どの方法が考えられるのではないか」と、売却計画の再検討を求める意見が出始めている。

 「前代未聞」 市文化財審が物言い
 八重山リゾートは、野底地区を走る県道石垣港伊原間線(79号)を挟むかっこうで、海側と山側にわたって計画されている。市議会は98年3月、野底地区 の5公民館が同リゾートの早期実現を求めて行った請願書を全会一致で採択している。これに先立ち、海側の計画地約31万平方メートルは、95年3月末に県 の開発許可が下りている。
 売却が検討されている野底御嶽の市有地は開発許可が下りた区域の一部。市財政課によると、八重山リゾート開発側は97年に売却を市側に申請した。御嶽 は、復元・保存していく考えを示している。
 市教委文化課が同審議会に行った説明によると、市側は、リゾート開発の円滑な推進や、市有地売却による歳入増加を狙って、市有地売却を検討。文化的な価 値の高い御嶽の敷地を売却することになるため、売却後の管理の在り方などについて市教委側に意見を求めている。
 売却計画について、28日の市文化財審議会では、「現在信仰されているか否かということは問題ではない。御嶽の敷地を売却することは考えられない」と いった否定的な意見のほかに、「文化財として指定されていない御嶽や井戸を早く指定すべきだ」といった提案がなされた。
 現地視察では、「イビ」と呼ばれるアーチ状の石組みや、石積みが残されているのを確認した。
 文化課などによると、現在の野底地区は1954年に入植した多良間出身者たちによって形成されてきたが、その入植以前にあった野底村は1905年に廃村 となっている。
 野底御嶽は、廃村となった野底村の人たちが信仰の対象としていたもの。多良間出身者も御嶽敷地内に独自のほこらを設け、一時期、信仰していたことがあ る。現在は具体的な信仰はないようだという。
 登記簿上の地目は、当初は「拝所」とされていたが、復帰時に「雑種地」に変更されている。


市の財政を潤すことは大切だし、リゾートを地域振興に生かせないかと考 える気持ちを、とりたてて、不思議だとは思わない。それは分かる。だがしかし、そのために、御嶽の土地を売ってしまってもかまわないと考えている市民が いったい何人いるのか、ちょっと想像できない。1250平方メートルという面積が広いか狭いかとか、その土地の売却益はいくらかとか、今現在、そこが信仰 の対象となっているかどうかということは、この際、別次元の問題だ。石垣市の市有地ということは、市民の土地を市役所が管理しているということにすぎない という点に留意しておこう。2月1日からは市議会の総務財政委員会の審議が始まる。市民の代表の先生がたの“視点”にも注目しておこう。